2020年春号

透析患者としてがん教育に期待すること

透析患者としてがん教育に期待すること

私は幼少期より小児腎炎を患っており、大学院生のときに腎不全になりました。その後、透析治療を行いながら学業を続けて大学院を卒業しました。卒業後は国立の研究所や中央省庁などで研究活動と情報システムの仕事を行い、2016年からは今までお世話になった医療分野に貢献したいと考え、現在の所属に転職しました。

私の立場からがん教育に期待することは、病気を抱えながら働いている人達に対する偏見をなくし、全ての人が心地よく働くことができる社会となるきっかけになることです。

私の場合、透析治療のため平日週3回はクリニックに通院する必要があります。そのため、通院日は定時に帰らなければならず、残業や夜の会議などに参加することができません。また、国内出張は不可能ではありませんが、前述の透析スケジュールの調整が必要となり、気軽に行くことはできません。あとは、立ち仕事や重い物を運ぶなどの力仕事についても、体力的に難しく困難です。

これらできないことや難しいことについては十分配慮して欲しいのですが、だからと言って仕事全般で手加減をして欲しいわけではありません。がん患者の方が病気であることが原因で重要な仕事から外されたり、簡単な仕事だけを与えられるという現状を聞いていますが、とても残念でなりません。これは、様々な病気を抱えながら働く人だけでなく、子育て中の方や親の介護をかかえている方、全てに言えることだと思います。配慮して欲しいことと、手加減されることは別だと考えています。

がん教育は日本で始まった健康のリテラシー教育です。がんに対する正しい知識を教えるだけでなく、健康と命の大切さについても学ぶ教育だと聞いています。これから日本は誰もが長く働かなければならない時代に突入することになり、病気をかかえながら仕事をする人も増えてくると思います。そうしたときに、職場の仲間が病気になったときに、どのように接することが良いのか、自分の事として考えるきっかけとなる教育であることを願っています。

石川大介

神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター

筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士課程修了
博士 ( 情報学 )、情報処理安全確保支援士、医療情報技師

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