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2020年春号

中学校がん教育~戸塚福祉保健センターの実践~

戸塚区民にがん検診を受けてほしい

横浜市では、健康づくりの指針「健康横浜21」や、「横浜市がん撲滅対策推進条例」の中で、生活習慣が健康に及ぼす影響に関する知識、がんの早期発見の重要性に関する啓発を行い、がん検診の受診率向上を図ることとしています。これを受けて戸塚区でも様々な機会を捉えてがん検診受診勧奨を行ってきました。2016年度からは3年間、区民を対象にがん講演会を行いました。参加者の満足度は高いものでしたが、定期的にがん検診を受診している方の割合が高く、無関心層への働きかけが課題でした。戸塚区のがん検診受診率は29.1%と低い状況(2019年度戸塚区区民意識調査より)が続き、参加者も年々減少してきたため方針転換をしました。

子ども達にアプローチしてはどうだろう?

戸塚区では毎年、小学校6年生への喫煙防止教育や、生活習慣病予防啓発のための小中学生親子参加型イベントを行っています。子ども達は少しの知識と考えるきっかけを提供すると、自分や家族の健康を考え、何が望ましい行動なのか気づくことができます。また、中学生の親世代は40?50歳代で生活習慣病やがん罹患率が増加する世代です。そこで、中学生にがん教育を行うことで、がんの知識や命の大切さ、がんとの共生等を考える機会となり、親世代へのがん検診受診勧奨にも繋がるのではないかと考えました。そんな中、学習指導要領が改訂され2021年度にはがん教育が完全実施されると知りました。区としても関わりたいという思いが芽生えました。2018年度神奈川県がん教育モデル授業に足を運び、神奈川県立がんセンターの片山先生や神奈川県がん患者団体連合会の長谷川氏と知り合い、ご教示いただきながらがん教育の実施に至りました。

中学校がん教育実施

2019年度は2校で合計4コマの授業を行いました。「がんの基礎知識」もしくは、「がんの基礎知識+経験談」、時間は50分から70分で、学校の希望に沿って実施しました。実施方法について片山先生よりご指導いただき、講師の紹介は片山先生、長谷川氏にご協力いただきました。基礎知識は医療従事者、経験談はがん経験者にお願いしました。

2019年度は2校で合計4コマの授業を行いました。「がんの基礎知識」もしくは、「がんの基礎知識+経験談」、時間は50分から70分で、学校の希望に沿って実施しました。実施方法について片山先生よりご指導いただき、講師の紹介は片山先生、長谷川氏にご協力いただきました。基礎知識は医療従事者、経験談はがん経験者にお願いしました。

実施までの流れ

生徒の反応を通して

がんの基礎知識も大切ですが、特に経験談では生徒達が話に引き込まれ真剣に聴き入る様子が印象的でした。がんに対する具体的なイメージを持ち、大切な人ががんになったら何ができるか等、自分のこととして考えるきっかけになりました。生徒の反応を校長会でお伝えしたところ、校長先生方のがんに対する理解が深まり、次年度の実施校はすぐに決定しました。がん経験者が来校することに不安を感じる学校もありましたが、今年度の実績が来年度実施のための後押しとなりました。

これからの展望

がん教育は基礎知識を学ぶだけでなく、生徒自身や家族の健康について考え、命の大切さを理解し、思いやりの心を育むことができます。がん検診受診率向上に直結するとは限りませんが、真剣に学び考え抜いた経験は、きっと彼ら彼女らの生きる力となります。その力が、生徒自身や家族、地域全体の健康づくりの一端を担うことに期待したいです。現在は区主導ですが、今後中学校が独自にがん教育を実施していけるように、地域や学校の特性を捉えながら、一つ一つ実施していきたいと考えています。この度、片山先生や神奈川県がん患者団体連合会の方々、神奈川県や横浜市教育委員会職員、中学校の教員等多くの方と出会うことができました。がん教育一つとっても様々な視点があり、他機関の方と繋がることで、視野が広がり事業を発展させることができます。私達もがん検診受診率向上のみを念頭に置くのではなく、がん対策に対して広い視点を持つことが必要だと気づかされました。この新たな繋がりや連携を大切にし、今後も中学校がん教育を進めていきたいと思います。

横浜市戸塚福祉保健センター福祉保健課 健康づくり係

写真左上から
[事務職]萩原麻紀子 
[保健師]小池由希子 / 市村容子 / 深瀬絵里子
[健康づくり係長]武島かおり
[保健師]山下由希 ( 本稿主筆)
[戸塚福祉保健センター長]里見正宏
[福祉保健課長]松本真佐人

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