がん疫学研究の情報発信サイト

がん患者と共に歩む~がん教育応援情報発信プロジェクト~On Cancerとは

皆さん、現在の日本では一年間にどのくらいの方ががんに罹るかご存知でしょうか? 最新の統計である2017年のデータによると(全国がん登録)は977,393人が新たにがんと診断されています。これは年々増加していて今現在も上昇し続けています。2人にひとりががんにかかる時代でありながら、未だがん検診受診率は殆どのがんで目標である50%を達成できていません。 こうした背景からがん対策推進基本計画第2期に、はじめて「がん教育・普及啓発」という施策が盛り込まれ、続く第3期計画では「がん教育・普及啓発」全ての施策を支える重要な基盤として位置づけられています。 国民の基本的知識として、また教養としてこどもからがんを知ることがいかに重要であるか、それをがん対策基本法では「がんに関する教育の推進」規定の(第23条)を新設し、『国及び地方公共団体は、国民が、がんに関する知識及びがん患者に関する理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育におけるがんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとする』と明記しています。 私は、がん対策推進基本計画第2期の施行と同時に厚労科研として組織されたがん教育研究班に携わって以来、がん予防研究としてがん教育の持つ力に期待をしているひとりでもあります。 具体的には、①子どもに対しては、健康と命の大切さについて学ぶことができる、②がんに対する正しい知識とがん患者に対する正しい認識を持つことができる、③国民に対しては、がん予防や早期発見に繋がる行動変容を促し、自分や身近な人が、がんになってもそれを正しく理解し、向かい合うことできるようになることを目標にしており、がんの教育への期待は、子どもに対する教育の産物としての子どもと大人双方にメリットがあることです。しかし、実際は、学校という教育現場に、どうがん患者らが関わっていくのか、多忙な医療現場と教育とをどう結び付けるのか、教員との連携だけでなく行政との良好な関係性を持ちながら、学校現場でがん教育を推進することはとても難しいことです。かといって、学校という組織の中だけで、がん教育を完結してしまうと、本来のがん教育の目的である「健康と命の大切さについて学ぶ」ことを達成することが困難になるでしょう。がん経験者らの生の声を届けることが大切なのです。そして、最新のがん治療について医療者が学校に出向くことで、医療の大切さや研究への興味関心を引き出すことができるかもしれません。 がん教育応援情報発信プロジェクトは、こうしたがん教育に関わるすべての人を支援するために、またがん患者らの外部講師としての活動を支援するために2019年秋にスタートしました。がん教育を進めたい保健体育の先生、これから学校へ出向いて外部講師として児童生徒とかかわりたい臨床医や医療関係者、そしてがん経験者として体験談を通して命の大切さを伝えたいサバイバーの方々全ての皆様にお届けします。

片山 佳代子(On Cancer 編集長)

島根県松江市出身、早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了後、順天堂大学大学院医学研究科にて博士(医学)号取得。
神奈川県立がんセンター臨床研究所 主任研究員を経て、2021年4月より国立大学法人 群馬大学情報学部准教授に就任。また同年、神奈川県がん教育協議会の座長を務める。

厚労科研指定課題研究『がん対策における進捗管理指標の策定と計測システムの確立に関する研究』社会医学分野委員、神奈川県がん対策推進審議会委員、同がん教育協議会委員等を務める。外部講師研修会など多くのがん教育セミナー講師を務め、学校教育だけでなく、社会教育として大人のがん教育の必要性や教育にも尽力している。 【専門】がん疫学・健康行動科学

On Cancer とは

単なる「がんについて」という意味だけでなく、 がんで健康教育を行う(何かの目的で行う)や、 がんと共に、がんと一緒に歩む(位置)という意味を込めて「On Cancer」と表現しました。

創刊号<秋号>表紙
創刊号<秋号>表紙

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